シチリアーノは泡沫に
皐はいつもより青白く、顔色が悪いように見えた。

ぼうっとした黒い瞳は窓の外に向けられていた。


「皐、大丈夫?具合悪そうだよ」


僕の声に皐は、はっとしたようにこちらを向いた。


「……大丈夫、少し頭痛がするだけ」

そう言って軽く微笑んだ皐の膝には黒いケースが乗っていた。

そうか今日は雨だから、崖にいけないな。

遠くの崖は、雨に濡れてまるで水彩画のようだった。

それを皐は愛しそうに眺めていた。

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