シチリアーノは泡沫に
「母さん、今何時だと思ってるんだよ」
「それよりも宿題ちゃんとやってる?」
いつもより強気な僕の言い草をものともせずに、母さんは言った。
「それよりもって……そんな話じゃなくて」
「もう夏休みも終わりなんだから」
母さんのその言葉に僕は一気に眠気がとんだ。
そうだ。いつの間にか時は流れ、僕がここにいられるのもあと一週間となった。
ここを離れれば、もう毎日のように豊さんや祐子さん、それに皐とも会えなくなる。
下手すれば、何ヵ月も何年も会えないだろう。
「宿題、あと数学と英語がちょっと残ってるけど、ちゃんとやってるよ」
夜の闇が僕を冷たく包み込む。
もうすぐ、夏が終わる。