シチリアーノは泡沫に
窓がカタカタと揺れる音がひっきりなしに耳に入ってくる。

風と波も心なしか荒れてきて、僕を寝かせてくれない。

でも、本当にざわついているのは、僕の。


――もう夏休みも終わりなんだから


母さんの声が反響するように耳の奥で鳴る。


終わり……皐と過ごす夕刻も。

何なのだろう。
不安のような焦りのような、曖昧で嫌な気持ちがする。

くそぅ、母さんのせいだ。


小一時間ほど布団の上で考え込んでいて、いい加減僕は疲れてきた。

「はぁ…。水でも飲んで落ち着こう」


静まり返った廊下を、音をたてないようにこっそりと歩いて厨房に向かった。

昼間はあんなに賑やかだった食堂は、当然だけど誰もいなくて、ただの空洞みたいだ。



ひゅうー、カサ…

そう、誰もいなくて、ひゅーって。


ひゅー……?
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