シチリアーノは泡沫に
「フルネームなんて他人行儀ね!もっと親しみを込めて呼びなさい。五郎くんとか、ゴロすけなんてのもいいわ」

そこ!?
しかも最後のは著作権が……

「いいわよねえ、ゴロすけくん?」

ええ!?もうすでに決定済み!?

「ねぇ?」

固まる僕に祐子さんは押し付けるように言った。


「……はい」

僕は諦めて従うことにした。

そして頼まれた(命令された)品を取りに行こうと立ち上がった。


神様、僕はこの場所でやっていけるのでしょうか。


ちらりと後ろを見ると、皐さんが窓の向こうを眩しそうに眺めていた。

7月の太陽の下、海水浴場であるこの地は、余暇を楽しむ人々の声や波の音が混ざりあっている。


暑くて短い夏が始まる。



僕にとって忘れられない夏になるなんて、

この時はこれっぽっちも思ってもみなかったんだ。
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