あしたのうた
果たすことができるか分からない約束。実現しないかもしれない約束。けれどだからこそ、『もしかしたら来ないかもしれない未来』ではなく『もしかしたら来るかもしれない未来』を信じて、人々は約束をしていた。
今はあの時代より、約束が果たされるのは当たり前のことだ。勿論そればかりの約束ではないけれど、あの頃よりはきっと格段に、『未来』に対する信頼が持てている、と感じる。
俺以外は、だけれど。
未来なんて信じない。紬に逢ってから、少しだけ信じてもいいかな、という気はしなくもないが。
俺がここまで未来を、過去を記憶を、信じていない理由。過去と記憶は、恐らく未来から派生したもので、だとしたら根本は未来で。
────もしかして、これも過去に、『前世』に関係しているのだろうか。
その考えはまだ、憶測に過ぎない。
「じゃあそれ近くなったら、また話ししよう。先過ぎて大体の日程しか分かってないし」
「ん、分かった。……ねえ、紬」
そういえば俺も紬も、相手の名前を呼ぶのが好きだな、とふと思った。
「……また、会おうよ。会えるよ」
言おうとした言葉を、紬にとられる。暗い中でその表情を窺うことはできないけれど、笑っているような雰囲気。
また、会えるかな。落とそうとした言葉は、渉としてか聡太郎としてか。どちらにしろ、次に会うのが年明けなんていうのは嫌だと。
それを、紬も思ってくれているのだろうか。
「俺、ちゃんと思い出すから」
「うん、分かってる。待ってるから」
「だから、会おう。色んな話したら、思い出せるような気がするんだ」
色々な話をして、今日このお祭りのように昔と同じ行事に参加して。無理やり記憶をたどっても恐らく無駄なのは分かっているから、せめてものきっかけを。
「……渉、無理してない?」
「なに、が?」
「そこまでして無理に思い出さなくても、渉が辛かったらいいんだよ?」
「……辛くなんてない、よ」
明るかった声のトーンが、心配そうなものに変わる。暗くて見えなくとも俺の顔に自分の顔を寄せて来た紬に、ほら前向いて、と促した。
きゅ、と握る手に力が込められる。それを握り返して、俺はあのね、と言葉を探った。
「紬は、俺に思い出してほしくない?」
「そ、んなことないっ」
「だよね。文として、聡太郎とのこと、思い出したくない?」
「そんなことないよ、」