コクリバ 【完】
ギャーギャーとくだらなくも楽しすぎる時間はあっという間で、気付くともう帰る時間。

慌てて絢香の家を飛び出し、走って家まで帰った。
うちは両親よりも兄の方が口うるさかったから、兄よりも先に家に着かなきゃいけない。
走りながら、さっきのガールズトークが脳内に甦ってくる。

合宿の日が、その日になるかもしれない。

走る速度が速くなった。
そんなことしても、合宿の日がすぐにくるわけじゃないのに……

おかげで思っていたよりも早く家に到着した。
でも……

家の玄関を開けると、その異様な光景に立ち尽くした。

玄関中に大きな靴が溢れている。
それは玄関の土間だけには収まり切れず、廊下に古新聞まで引いて並べてある。

こんなの久しぶり。

兄が中学の頃まではよくこんな光景があった。
兄の友達がたくさん来ていた。

その頃から、収まり切れない靴は廊下に古新聞だった。

……ということは、菊池義人がいるかもしれない。
ともちゃんといろんなことをした菊池義人が

菊池兄弟は古新聞置き場まで知っていて、昔はまるで我が家のように勝手に出して並べていた。

自分の靴を踏まれないように、ちゃんと下駄箱に入れてから、恐る恐るリビングのドアを開けて声を掛ける。

「ただいまー」
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