コクリバ 【完】

中山さんについていくと、その大きな背中は玄関の前で立ち止まった。

「奈々ちゃん、もうすぐ誕生日でしょ？だからこれプレゼント」
「えっ？」

予想に反して、中山さんは個人的な用事。
てっきり、アレはどこにあるの？系の用事だと思っていた私は、想定外の出来事に反応できなかった。

中山さんが小さい箱を私の手に乗せる。

「開けてみて」

これまでにも何回かお土産的な物は中山さんから貰ったことがある。
でもこれは明らかにプレゼントという包装で、しかも箱が小さい。

どんな真意があるのかと中山さんを見れば、中山さんは人懐っこい笑顔で、
「そろそろこんな物が似合うかと思って……」
そう言うと、小さなその箱を取り、大きなグローブのような手でそっと開けた。

中に入っていたのはシルバーのペンダント

「うわぁ…」

シンプルな長方形のペンダントヘッドには、ピンクのストーンが一粒埋められている。
大人の女性がするようなジュエリー。
思わず手が伸びる。
でもそれに一瞬触れて、すぐに気付いて手を引いた。

「こんな高そうな物、もらえません」