コクリバ 【完】
「いい人そうじゃない。かっこいいし。奈々もお母さんに似てイケメン好きなのね」
「お母さんがイケメン好き?お父さん全然イケメンじゃないじゃん」
「そんなこと言わないの。昔はお父さんもイケメンだったの!」
前にも聞いた話だけど、お父さんに頼みこまれたから結婚したんだといつも母は言う。
でも父に聞くと必ず母から頼まれたと言う二人。
どっちが本当か分からないけど、そんな二人が羨ましかった。
時々リビングの方からは野太い笑い声が聞こえていた。
この中に高木先輩もいるんだと思って、その笑い声の中に低い声を聞き分けようとしたけど全くできなかった。
しばらくすると一人一人綺麗にたいらげてあるお皿を持って、キッチンに入ってきた。
これも恒例のこと。彼らなりの母への感謝なのだろう。
「ごちそうさまでした」
「はいはい。置いてていいわよ」
久しぶりに見かけた人たちもいるのに、
「膝の調子はどう?」
「この前一緒に歩いてたのは彼女?」
なんて母は兄の友達のことをよく知っていた。
中山さんが来たら、私をチラリと見て小声で
「ありがとうね」
と言っていた。
高木先輩が来た時には
「奈々が携帯欲しいって言うのよ。どう思う?」
って、まるで試すようなことを言いだして私は慌てた。
だけど高木先輩は
「いいんじゃないですか?俺も欲しいです」
って落ち着いて答えていた。
最後に兄が入ってきた。これもいつも通りの決まり事。
「母さん助かったよ。奈々だけならカレーは深夜になるとこだった」
せっかく作ったのに、その言い方はない。
「奈々もこれから料理頑張るのよね」
母が兄の前で意味深な笑顔を作った。
慌ててその笑顔を隠すけど、でも兄は疑い深く母の顔と私とを交互に見ている。
「奈々。それもらったのか?」
兄がペンダントを指す。
そんなに私がペンダントをつけているのが珍しいのか、みんなよく気付くな。
「うん」
小声で答えると、
「誰にもらった?」
お決まりのようにそう聞いてくる。
返答に困っていたら、
「中山君だって」
横から母がバラしてしまった。
どんなに兄が騒ぐだろうと覚悟したら、「ふーん」とそれだけ言うとリビングに戻って行った。
そっとリビングの扉に近づき中の様子に聞き耳を立てるけど、兄が中山さんを責めてる様子はない。
「お母さん、なんでお兄ちゃんに言ったの?」
「お兄ちゃんも分かってるわよ」
と、なぜかこうなるのが分かってたかのように母は笑っていた。
この頃、私はまだ自分の気持ちばかりにいっぱいいっぱいで、必死で大人に近づこうと背伸びをしていたような気がする。
それが空回りするということには気付かずに……
「お母さんがイケメン好き?お父さん全然イケメンじゃないじゃん」
「そんなこと言わないの。昔はお父さんもイケメンだったの!」
前にも聞いた話だけど、お父さんに頼みこまれたから結婚したんだといつも母は言う。
でも父に聞くと必ず母から頼まれたと言う二人。
どっちが本当か分からないけど、そんな二人が羨ましかった。
時々リビングの方からは野太い笑い声が聞こえていた。
この中に高木先輩もいるんだと思って、その笑い声の中に低い声を聞き分けようとしたけど全くできなかった。
しばらくすると一人一人綺麗にたいらげてあるお皿を持って、キッチンに入ってきた。
これも恒例のこと。彼らなりの母への感謝なのだろう。
「ごちそうさまでした」
「はいはい。置いてていいわよ」
久しぶりに見かけた人たちもいるのに、
「膝の調子はどう?」
「この前一緒に歩いてたのは彼女?」
なんて母は兄の友達のことをよく知っていた。
中山さんが来たら、私をチラリと見て小声で
「ありがとうね」
と言っていた。
高木先輩が来た時には
「奈々が携帯欲しいって言うのよ。どう思う?」
って、まるで試すようなことを言いだして私は慌てた。
だけど高木先輩は
「いいんじゃないですか?俺も欲しいです」
って落ち着いて答えていた。
最後に兄が入ってきた。これもいつも通りの決まり事。
「母さん助かったよ。奈々だけならカレーは深夜になるとこだった」
せっかく作ったのに、その言い方はない。
「奈々もこれから料理頑張るのよね」
母が兄の前で意味深な笑顔を作った。
慌ててその笑顔を隠すけど、でも兄は疑い深く母の顔と私とを交互に見ている。
「奈々。それもらったのか?」
兄がペンダントを指す。
そんなに私がペンダントをつけているのが珍しいのか、みんなよく気付くな。
「うん」
小声で答えると、
「誰にもらった?」
お決まりのようにそう聞いてくる。
返答に困っていたら、
「中山君だって」
横から母がバラしてしまった。
どんなに兄が騒ぐだろうと覚悟したら、「ふーん」とそれだけ言うとリビングに戻って行った。
そっとリビングの扉に近づき中の様子に聞き耳を立てるけど、兄が中山さんを責めてる様子はない。
「お母さん、なんでお兄ちゃんに言ったの?」
「お兄ちゃんも分かってるわよ」
と、なぜかこうなるのが分かってたかのように母は笑っていた。
この頃、私はまだ自分の気持ちばかりにいっぱいいっぱいで、必死で大人に近づこうと背伸びをしていたような気がする。
それが空回りするということには気付かずに……