コクリバ 【完】
手順も人それぞれだし、ホテルも様々。
セオリー通りなんていかない、
いやそもそもセオリーなんてないのかもしれない。

ここにきて全くどうしたらいいのか分からない。
ただ広いベッドに浅く腰を下ろし、テレビを見ていた。
内容は全く頭に入ってこなかったけど……

こんな時にどうしたらいいかなんて、学校ではもちろん誰も教えてくれなかった。

生きていくのに本当に必要なの?と言えるようなものはたくさん覚えたけど、本当に困った状況の時には、そんなもの全く役に立たない。

どうせなら、生きていくのに本当に必要なことを教えてくれればいいのに……

例えば……
顔がすぐに赤くなってしまうのを止める方法とか、
人を好きになったらどうしたらいいのかとか、
彼氏がシャワーに行ってる間はどうやって待ってればいいのかとか……

シャワーの音が止んだ。

しばらくして、先輩がお風呂から上がってきた気配がする。
ドキドキと、鼓動が痛いくらい早まる。

私はそちらの方を見られなかった。
テレビに夢中になってるフリをした。

「……」
「……」
「……おい」
「……」
「……シカトしてんなよ」

思わず振り返った私の前にいたのは、バスタオル一枚の高木先輩。

先輩の裸の上半身を見てしまった。

引き締まった身体つきで、ユニホーム姿のときよりも鍛えられた筋肉が美しかった。
私の胸がドキンと大きく動く。
そんな私を腰に手を当てたまま、先輩が満足そうに見ていた。


……後から思うと、先輩は自慢の身体を見せつけて、その反応を楽しんでたんじゃないかと思う。


「おまえも入って来いよ」

その声でやっと我に返って慌ててバスルームに向かった。。
衝撃的過ぎる展開に脳内がヒートアップしそう。


身体を拭き終えた後、またしても悩む状況に陥った。

洋服を着て出るか、私もバスタオル一枚で出るか……

さすがにバスタオル一枚でって……そんな自信はない。
かと言って、もう一度洋服を着るのも……暑苦しい。

本当にこんな時どうやったらいいのか、教科書とは言わないから誰か教えてほしい。

ウダウダ悩んでふと横を見ると、ストライプの布が見えた。
引っ張り上げると、大きなシャツ風のパジャマ。

救われた。
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