コクリバ 【完】
意を決して、バスルームを出た。
なのに予想に反して先輩はくつろいでテレビを見ている。

小さいテーブルの上には、持ち込んだ飲み物。
なんでそんなにくつろげるんだろう。

私が出てきたことに気付いた先輩は、自分の横に座るようにポンポンとそこを叩いた。

少し距離を置いて、先輩の横に座ると
「はい」
買ってきたプリンを渡された。

そうか。私が嫌だったら何もしないと言っていたから、今日はこのままなんだ。

そう気付いた私は息をするのが少し楽になった。
緊張が解けたんだと思う。
先輩の横でテレビを楽しみながら、プリンを食べた。

時々、先輩の視線を感じて、横を向くと微笑み合った。
高木先輩は私の前ではよく笑ってくれる。

「奈々。プリンついてる」
「え?どこに?」
「ここ……」

先輩が私の口のすぐ横を舐めた。

ビクリとして身を引くと腕を掴まれ、さらに唇を舐め上げる。

「んっ……」

そのまま深くなる口づけ。
どうしよう。

だんだん何も考えられなくなってくる。

これまで感じたことのない甘い誘惑に、ただただ目を閉じて身を委ねた。


そうして始まってしまった。
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