コクリバ 【完】
「……なんで?」
「……」
「なんで、やめとけって言ったの?」
「おまえには無理だ。あいつはモテるから、おまえなんて相手にされない」

そうか、兄は私の片想いだと思っているんだ。

そう気付いたら急下降していた気持ちが簡単に急浮上する。

「なんとも思ってないよ。高木先輩のことなんとも思ってないから。
そんな、いつもいつもそんな言い方しないで。
お兄ちゃんがそんなだったら、私には彼氏もできないよ。
もう高校生だよ。女子高生なんだからさ……」

安堵感からか、早口でこの場を乗り切ろうとしてるのに、

「後で、中山も来るから」
「……え?中山さん?」
「あぁ。中山」
「……うん」

私の話の腰を折ってまで、どうして兄がわざわざそんなことを言うのか分からなかった。

「手伝って来いよ」
「……うん」
「おまえもあの子みたいに、少しは女らしいとこ見せろよ」
「分かってるよ!」

兄がそう言うのが、腑に落ちなかった。
小さい頃から兄の言うとおりに、兄の友達と遊んでいたからこうなったと思っている私に、今更女らしいところを求める兄は矛盾していると思う。
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