コクリバ 【完】
「ナナちゃんだっけか?……大きくなったな」
どっぷりと勝手な妄想に浸っていた時、いきなり横から話しかけられ驚いてジュースをこぼしそうになった。
驚きながら隣を見ると、菊池自動車の従業員のお兄さんがビール片手に、私の隣りの古タイヤに座ろうとしている。
「いくつになった?」
「……16です」
オドオドしながら答えると、
「ですって……言葉遣いも変わったな。すっかり女らしくなったじゃないか」
なぁ。と言いながらガシガシと頭を撫でられた。
「俺がここに来た時は、ランドセル背負ってたもんなぁ」
「山さん。おっさんの眼になってますよ」
ほぼ初対面のお兄さんに話しかけられ、困惑しているところに入ってきてくれたのは、
高木先輩だった。
先輩は、山さんと呼んだその人の隣りの岩に腰を降ろした。
座る直前に一瞬だけ目線が来たから、それだけでたまらなく嬉しくなる。
それを隠すように、小さくお辞儀をした。
「高木。ナナちゃんのこと知ってるのか?」
「はい。緒方さんのところで一度会いました」
そう言いながら、私の方に視線を向けた先輩が左頬だけで笑った。
その目が「だけじゃないけどな」と言っている。
それだけで頬を熱くした私を見て、更に笑みを深くする先輩。
「高木ー。こんな少女に手、出すなよ。犯罪だぞ」
山さんと呼ばれたその人は、私たちの雰囲気に気付いたのかもしれない。
ニヤニヤしながら煙草に火を点けた。
「山さんだったら、犯罪になるでしょうね」
「だから人をおっさん扱いするなって。おまえとたいして変わんねーって」
「俺、まだ17っすよ」
「は?17?ガキじゃねーか。あー、弟の方と一緒か……」
二人がまだ楽しそうに話すのを聞いていた。
でも大事なことに気付いて、話の内容なんて耳に入ってこない。
私はまだ先輩の誕生日を知らない
どっぷりと勝手な妄想に浸っていた時、いきなり横から話しかけられ驚いてジュースをこぼしそうになった。
驚きながら隣を見ると、菊池自動車の従業員のお兄さんがビール片手に、私の隣りの古タイヤに座ろうとしている。
「いくつになった?」
「……16です」
オドオドしながら答えると、
「ですって……言葉遣いも変わったな。すっかり女らしくなったじゃないか」
なぁ。と言いながらガシガシと頭を撫でられた。
「俺がここに来た時は、ランドセル背負ってたもんなぁ」
「山さん。おっさんの眼になってますよ」
ほぼ初対面のお兄さんに話しかけられ、困惑しているところに入ってきてくれたのは、
高木先輩だった。
先輩は、山さんと呼んだその人の隣りの岩に腰を降ろした。
座る直前に一瞬だけ目線が来たから、それだけでたまらなく嬉しくなる。
それを隠すように、小さくお辞儀をした。
「高木。ナナちゃんのこと知ってるのか?」
「はい。緒方さんのところで一度会いました」
そう言いながら、私の方に視線を向けた先輩が左頬だけで笑った。
その目が「だけじゃないけどな」と言っている。
それだけで頬を熱くした私を見て、更に笑みを深くする先輩。
「高木ー。こんな少女に手、出すなよ。犯罪だぞ」
山さんと呼ばれたその人は、私たちの雰囲気に気付いたのかもしれない。
ニヤニヤしながら煙草に火を点けた。
「山さんだったら、犯罪になるでしょうね」
「だから人をおっさん扱いするなって。おまえとたいして変わんねーって」
「俺、まだ17っすよ」
「は?17?ガキじゃねーか。あー、弟の方と一緒か……」
二人がまだ楽しそうに話すのを聞いていた。
でも大事なことに気付いて、話の内容なんて耳に入ってこない。
私はまだ先輩の誕生日を知らない