コクリバ 【完】
「奈々ちゃん。明日の夏祭り、予定ある?」
そうか、明日だった。
絢香に誘われて、風邪をひく予定の夏祭りは明日だ。
「予定はないです。でも出かけられなくて」
「どういうこと?」
中山さんが振り返った。
普段の穏やかな感じはなく、その表情に一瞬、動けなくなる程。
「あの……ちょっとした計画があって……」
「何?」
「ちょっと風邪をひく予定で……」
「え?カゼ?」
片眉を下げて、中山さんが私を睨むように見る。
さすが元キャプテンだと、なぜかこの時納得した。
その威圧感に負け「内緒ですよ」と前置きして、夏祭りを風邪で欠席する予定を話してしまった。
「……そうすると、たぶん二人きりになって、彼が告ってくれるんじゃないかと。そんな計画です」
話せば話すほどバカらしい計画だと思えてきて、二人で笑っていた。
「じゃ、奈々ちゃんは明日、祭りには行けないね」
「そうですね。見つかったらまずいですから……」
「誘おうと思ってたんだよ」
「え?」
「明日。俺と一緒にって……」
「あー。お兄ちゃんたちも行くんですか?」
「いや。俺と二人で、って……」
歩いていた足が止まった。
後ろを振り返るけど、兄はまだ来ない。
「……」
「奈々ちゃん……」
「あ、あの、そういうことなんで、明日は家から出れないんで、すみません」
あはは……と、中山さんの横を通り抜けて、家に帰ろうとした。
途端、左腕を掴まれた。
見上げると中山さんの真剣な目が、じっと私を見ている。
これまで私には向けられたことがないような雰囲気で。
イヤな汗が背中をつたった。
「あの……手、痛いです」
「あ、ごめん」
中山さんの手が私の腕を解放し逃げ出そうかと距離を一歩取ると、グイッと引き寄せられ、その大きな腕に抱きしめられてしまった。
全く予想していなかっただけに、簡単にその胸に体重を預ける格好となった。
そうか、明日だった。
絢香に誘われて、風邪をひく予定の夏祭りは明日だ。
「予定はないです。でも出かけられなくて」
「どういうこと?」
中山さんが振り返った。
普段の穏やかな感じはなく、その表情に一瞬、動けなくなる程。
「あの……ちょっとした計画があって……」
「何?」
「ちょっと風邪をひく予定で……」
「え?カゼ?」
片眉を下げて、中山さんが私を睨むように見る。
さすが元キャプテンだと、なぜかこの時納得した。
その威圧感に負け「内緒ですよ」と前置きして、夏祭りを風邪で欠席する予定を話してしまった。
「……そうすると、たぶん二人きりになって、彼が告ってくれるんじゃないかと。そんな計画です」
話せば話すほどバカらしい計画だと思えてきて、二人で笑っていた。
「じゃ、奈々ちゃんは明日、祭りには行けないね」
「そうですね。見つかったらまずいですから……」
「誘おうと思ってたんだよ」
「え?」
「明日。俺と一緒にって……」
「あー。お兄ちゃんたちも行くんですか?」
「いや。俺と二人で、って……」
歩いていた足が止まった。
後ろを振り返るけど、兄はまだ来ない。
「……」
「奈々ちゃん……」
「あ、あの、そういうことなんで、明日は家から出れないんで、すみません」
あはは……と、中山さんの横を通り抜けて、家に帰ろうとした。
途端、左腕を掴まれた。
見上げると中山さんの真剣な目が、じっと私を見ている。
これまで私には向けられたことがないような雰囲気で。
イヤな汗が背中をつたった。
「あの……手、痛いです」
「あ、ごめん」
中山さんの手が私の腕を解放し逃げ出そうかと距離を一歩取ると、グイッと引き寄せられ、その大きな腕に抱きしめられてしまった。
全く予想していなかっただけに、簡単にその胸に体重を預ける格好となった。