コクリバ 【完】
「バレた、って言うか……でも上手く誤魔化せたと思います」
「誤魔化せてねーって、絶対。今までと全然態度違うから」
「つ、付き合ってるとは思ってないと思います。
どっちかと言うと、私の片想いだと……」
「バレてんじゃん」
「何も言ってないですよ!」

それでも先輩が笑っているような雰囲気だったから、ホッとした。
先輩とこんな風に、普通に話せることが嬉しくて舞い上がっていたのかもしれない。

そうでなくても私はこの人の声に弱い―――

「で、なんて?」

別に大したことじゃない、って軽い雰囲気で先を促されるから、つい答えてしまう。

「あいつはモテるからやめとけ、って」
「なんで俺なんだよ。緒方さんの方がモテんだろ、って。なぁ」

同意を求められたけど、兄がモテてたなんて全く知らないし、私を裏切った兄がモテる訳なんてない。

「……兄は、モテないと思います」
「は?どうした?なんかあったのか?」

先輩の声が楽しそうじゃなくなった。
私のたった一言で、異変を感じたのかもしれない。
だとすると、なんて先輩はすごいと思った。
でも、本当は、私が明らかに不機嫌になったからかもしれない。

「兄が、私を、裏切ったんです」
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