コクリバ 【完】
「ふっ。頼りな……」
そう言って更に優しい指使いで左耳たぶを弄ばれたから、全神経が左耳たぶに集中している。
「中山さんに告られたんだろ」
右を向けば、その整った顔が極至近距離に。
そんな距離なのに真っ直ぐ見られているから、じっとしていられない。
「ちゃんと、断りました」
「知ってるよ」
そう言いながら左耳たぶを強く引かれた。
「……なんか、先輩、言い方が意地悪です」
「悪かったな。元からこんな喋り方なんだよ」
初めて喧嘩っぽい雰囲気になったな、なんて呑気に考えていた。
それも仲良い証拠だ、なんて都合の良いように。
「奈々。俺、自衛隊に行くから……」
「……はい」
そんな呑気な私は気付かなかった。
先輩がもっといろいろ悩んでいたことに……
「待てるか?」
「はい。……って、何をですか?」
「ふっ……」
先輩が右手で口元を隠して笑っている。
「そうだな。おまえは知らないんだよな」
「自衛隊についてですか?」
「あぁ」
「……」
先輩の次の言葉を待っていた。
自衛隊とは……なんて、説明してくれるのかと勝手に思っていた。
「市原は、大学に行くんだろ?」
え?
自衛隊について教えてくれないんですか?
そう言って更に優しい指使いで左耳たぶを弄ばれたから、全神経が左耳たぶに集中している。
「中山さんに告られたんだろ」
右を向けば、その整った顔が極至近距離に。
そんな距離なのに真っ直ぐ見られているから、じっとしていられない。
「ちゃんと、断りました」
「知ってるよ」
そう言いながら左耳たぶを強く引かれた。
「……なんか、先輩、言い方が意地悪です」
「悪かったな。元からこんな喋り方なんだよ」
初めて喧嘩っぽい雰囲気になったな、なんて呑気に考えていた。
それも仲良い証拠だ、なんて都合の良いように。
「奈々。俺、自衛隊に行くから……」
「……はい」
そんな呑気な私は気付かなかった。
先輩がもっといろいろ悩んでいたことに……
「待てるか?」
「はい。……って、何をですか?」
「ふっ……」
先輩が右手で口元を隠して笑っている。
「そうだな。おまえは知らないんだよな」
「自衛隊についてですか?」
「あぁ」
「……」
先輩の次の言葉を待っていた。
自衛隊とは……なんて、説明してくれるのかと勝手に思っていた。
「市原は、大学に行くんだろ?」
え?
自衛隊について教えてくれないんですか?