コクリバ 【完】
「それで、どうなったの?」
ともちゃんが絢香に話の続きを促す。

「何の話?」
「夏祭りの時だよ。絢香とオサムッチ、二人で回ったんだって」
「そうなの?計画通りじゃん」

私もニヤニヤと絢香を見た。

「何々?それで?二人になってどうしたの?」

冷たいペットボトルを絢香の首筋にくっつけると

「ひゃっ!もう、奈々!」

絢香が照れてる。

「それで?」

ともちゃんと私の顔を交互に見た絢香が、
「付き合おう、って」
にやけた顔を隠すようにしながら白状した。

「それから?」

絢香に「良かったね」って言う隙もなく、ともちゃんがその先を催促している。

「それから……手を繋いで一緒に帰ったの」

やっぱりどうしても顔がニヤけてしまう絢香が可愛いと思う。

でも、
「手だけ?キスは?」
とも先生はそれだけでは納得しないらしい。

「そんなの、まだだよ。やっと付き合うようになったんだよ。あの、オサムッチの彼女になれたんだよ。私、すごくない?すごいでしょ?ねぇ奈々」
「う、うん」
「ほら。奈々は分かってる。あのオサムッチの彼女になれただけでもすごいことなのに……そういうものは、これから自ずと……」

どのオサムッチだよ。

「じゃぁ、その気合の入った水着は何?」

とも先生の指摘に、絢香は気まずそうに視線をプールに向けた。

「え?何?なんかあるの?」
「奈々ちゃん。気が付かなかった?」
「何に?」
「今日、ここ、やたらとうちの高校の人見かけるよね?しかもバスケ部のファンの人たちばっかり」
「あぁ、そう言えば」
「おかしくない?」
「うん。偶然って割には多いよね」
「しかもみんな入口の方をチラチラ気にしてるし……」
「……絢香!なんで今日プールに行こうって言いだしたの?」

私の大きな声がテントの下で響いたとき、掻き消すようにキャーという声がプールの方から聞こえてきた。
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