コクリバ 【完】
「いや…やっぱいい」
「なに?そういうの気になるじゃん」
「気にするな。…泳ぐか?」

もう話す気はないというようにゴーグルをかけ直す吉岡。
もう聞いても無駄な気がして私もゴーグルをかけ直した。

「そうだね。でもあっちまで行ったら、もうそろそろ上がろうかな」
「じゃ、競争するか?」
「えー。ハンデ頂戴」
「緒方が出た後、5秒してから俺が出るのは?」
「うん、分かった。負けた方はジュースおごりね」
「やった。ジュースゲット」
「まだわかんないじゃん」

こんな風に普通に話せる日が戻るなんて思わなかった。

もっと前にはこんな何気ない会話にでもドキドキしていた。
だけど結局想っていたのは私だけだった。
吉岡には彼女がいたんだし。

あのコクリバでフラれた時からずっと時が止まっていたような関係が、また普通に戻れた気がしてた。

仲の良い友達に戻れたと……
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