コクリバ 【完】
勝負は私が勝った。
もしかしたら、吉岡は遠慮したのかもしれない。
「しょうがねー」
なんて言いながら吉岡が先にプールから上がって、その後ろから上がろうとするとハシゴの上で吉岡が手を出している。
まるで、掴まれって格好で……
「……あ、大丈夫」
俯き気味にそう言って、その手を取らなかった。
「そっか」
そう言うと、私が上がり切るのを待って吉岡が先を歩く。
なぜかドキドキした。
背が伸びている。
しかも上半身が裸で、その背中についている筋肉がやけに綺麗だから……つい見てしまう。
襟足の短い黒髪から、水のしずくが背中をつたって落ちていく。
手を伸ばせば触れられるその距離で、私は視線を逸らした。
「吉岡。私、ちょっとタオル取ってくるね」
いけない。
何を吉岡相手にドキドキしてしまったんだろう。
私たちが陣取っていたところには、絢香がオサムッチと楽しそうに笑っていた。
邪魔にならないように、こっそりタオルを取ろうとしたら、
「緒方。風邪大丈夫?」
オサムッチが話しかけてきた。
たぶんオサムッチと話するのは今日が初めて。
“緒方”なんて、名字を呼び捨てにされるのも初めて
「うん。すぐ治ったの」
「そうか。祭り、残念だったな」
絢香と目が合った。
少なくとも絢香も私も残念だなんて思っていない。
「うん。そうだねー」
「今度は4人で映画でも行こうな」
ん?
もう絢香とオサムッチは付き合ってるんだから、二人で行けばいいのに……なんで4人?
そう思ったけど……
「そうだね」
深く考えず同意しておいた。
もしかしたら、吉岡は遠慮したのかもしれない。
「しょうがねー」
なんて言いながら吉岡が先にプールから上がって、その後ろから上がろうとするとハシゴの上で吉岡が手を出している。
まるで、掴まれって格好で……
「……あ、大丈夫」
俯き気味にそう言って、その手を取らなかった。
「そっか」
そう言うと、私が上がり切るのを待って吉岡が先を歩く。
なぜかドキドキした。
背が伸びている。
しかも上半身が裸で、その背中についている筋肉がやけに綺麗だから……つい見てしまう。
襟足の短い黒髪から、水のしずくが背中をつたって落ちていく。
手を伸ばせば触れられるその距離で、私は視線を逸らした。
「吉岡。私、ちょっとタオル取ってくるね」
いけない。
何を吉岡相手にドキドキしてしまったんだろう。
私たちが陣取っていたところには、絢香がオサムッチと楽しそうに笑っていた。
邪魔にならないように、こっそりタオルを取ろうとしたら、
「緒方。風邪大丈夫?」
オサムッチが話しかけてきた。
たぶんオサムッチと話するのは今日が初めて。
“緒方”なんて、名字を呼び捨てにされるのも初めて
「うん。すぐ治ったの」
「そうか。祭り、残念だったな」
絢香と目が合った。
少なくとも絢香も私も残念だなんて思っていない。
「うん。そうだねー」
「今度は4人で映画でも行こうな」
ん?
もう絢香とオサムッチは付き合ってるんだから、二人で行けばいいのに……なんで4人?
そう思ったけど……
「そうだね」
深く考えず同意しておいた。