コクリバ 【完】
「……奈々ちゃん。やっぱりもう少し付き合って」
突然市原先輩言われ、身支度する手が止まった。
「あの……」
まだモデルをやっていいってこと?
「あぁ、もうあと少しで終わるから……奈々ちゃんじゃないとダメなんだ」
中途半端な形で終わらないで良かった、と単純に思った。
「はい。手伝わせてください」
嬉しかった。
拒否された後に必要とされたからなのか、私は高木先輩と帰ることよりも市原先輩のモデルを続ける方を選んだ。
高木先輩に怒られた直後だったというのに……
「悪いな、セイヤ。今日で終わりにするから」
「……」
高木先輩は、私の方をチラッとだけ見て何も言わないで立ち去った。
ズキリと胸が痛んだけど、改めて謝りに行こうくらいにしか思ってなかった。
「じゃ、戻りますね」
「いや。少し休憩にしよう」
市原先輩が道具を置いて、立ち上がる。
「はい……」
返事をしたけど、市原先輩は私の返事なんかどうでもいいかのように窓の外をじっと見ている。
その横顔にこれまでにない不安を感じてしまった。
その日、市原先輩の絵筆が再び握られることはなかった。
突然市原先輩言われ、身支度する手が止まった。
「あの……」
まだモデルをやっていいってこと?
「あぁ、もうあと少しで終わるから……奈々ちゃんじゃないとダメなんだ」
中途半端な形で終わらないで良かった、と単純に思った。
「はい。手伝わせてください」
嬉しかった。
拒否された後に必要とされたからなのか、私は高木先輩と帰ることよりも市原先輩のモデルを続ける方を選んだ。
高木先輩に怒られた直後だったというのに……
「悪いな、セイヤ。今日で終わりにするから」
「……」
高木先輩は、私の方をチラッとだけ見て何も言わないで立ち去った。
ズキリと胸が痛んだけど、改めて謝りに行こうくらいにしか思ってなかった。
「じゃ、戻りますね」
「いや。少し休憩にしよう」
市原先輩が道具を置いて、立ち上がる。
「はい……」
返事をしたけど、市原先輩は私の返事なんかどうでもいいかのように窓の外をじっと見ている。
その横顔にこれまでにない不安を感じてしまった。
その日、市原先輩の絵筆が再び握られることはなかった。