コクリバ 【完】
そのホクロはあの少女が紛れもなく私であるということ
市原先輩に見られていたんだろう…気が付かなかった。
いつの間に移動したのか覚えていない。気付くと事務所みたいなところにいた。
「大丈夫?人酔いしたのかな?」
顔を上げると、20代くらいの華奢なお姉さんが優しく微笑んでいた。
その優しそうな雰囲気に、堪えていた涙が溢れる。
「どうしたの?大丈夫?」
渡されたハンカチはとても良い香りがして、それを顔に押し付け止まらない涙を隠した。
市原先輩の絵はすごいと思う。
多くの人の高い評価を集めていて、そのことも嬉しいと思った。
ただ、私が知らないうちに大きく変わっていたその絵が信じられなかった。
絵の価値観どころかテーマ性まで変わっている。
市原先輩はどうしてしまったのだろう。
絵が変わったことを私が知らなかったという事実が、市原先輩に大きく距離を開けられた気がしてしょうがない。
裏切りというより、他人行儀という感じ。
もっと近い先輩後輩の関係だと思っていた。
そしてあのキスマーク。
もちろん私の背中にはそんなものはない。
だから絵に描かれている少女は私ではない。
先輩の想像の産物なんだと自分に言い聞かせても、溢れてくる涙は止まらなかった。
まるで本当にキスマークを付けられたかのように……
市原先輩に見られていたんだろう…気が付かなかった。
いつの間に移動したのか覚えていない。気付くと事務所みたいなところにいた。
「大丈夫?人酔いしたのかな?」
顔を上げると、20代くらいの華奢なお姉さんが優しく微笑んでいた。
その優しそうな雰囲気に、堪えていた涙が溢れる。
「どうしたの?大丈夫?」
渡されたハンカチはとても良い香りがして、それを顔に押し付け止まらない涙を隠した。
市原先輩の絵はすごいと思う。
多くの人の高い評価を集めていて、そのことも嬉しいと思った。
ただ、私が知らないうちに大きく変わっていたその絵が信じられなかった。
絵の価値観どころかテーマ性まで変わっている。
市原先輩はどうしてしまったのだろう。
絵が変わったことを私が知らなかったという事実が、市原先輩に大きく距離を開けられた気がしてしょうがない。
裏切りというより、他人行儀という感じ。
もっと近い先輩後輩の関係だと思っていた。
そしてあのキスマーク。
もちろん私の背中にはそんなものはない。
だから絵に描かれている少女は私ではない。
先輩の想像の産物なんだと自分に言い聞かせても、溢れてくる涙は止まらなかった。
まるで本当にキスマークを付けられたかのように……