コクリバ 【完】
「高木先輩はどこですか?」
美術準備室での勢いをそのままに絢香が言い放った。
「高木?」
聞き直した市原先輩の視線が一瞬およいだ後、ゆっくり私を捉えた。
私も市原先輩の眼を見て頷いた。
「あー、高木ね、セイヤね。どうだろ、もう帰ったかな……」
市原先輩の呑気な声に文句を言いたくなったけど、その同じタイミングで廊下を歩いてくる足音が聞こえてきた。
スリッパを引きずるように歩く音―――
私の頭より心臓の方が早くその足音が誰の足音なのか分かったらしく、ドキンと大きく動き出した。
身体中が心臓になったかのようにドキンドキンとうるさい。
うるさい胸に手を当てて、
足音の方を振り向くと……
高木先輩がいた。
どのくらいその姿を見ていなかっただろうか。
高木先輩はポケットに片手を入れて、いつものようにめんどくさそうにスリッパを引きずりながら、まっすぐこっちに向かって歩いてきている。
久しぶりに会えたその感動で、鼻の奥がツンとなる。
「先輩……」
考えるよりも先に言葉が出ていた。
美術準備室での勢いをそのままに絢香が言い放った。
「高木?」
聞き直した市原先輩の視線が一瞬およいだ後、ゆっくり私を捉えた。
私も市原先輩の眼を見て頷いた。
「あー、高木ね、セイヤね。どうだろ、もう帰ったかな……」
市原先輩の呑気な声に文句を言いたくなったけど、その同じタイミングで廊下を歩いてくる足音が聞こえてきた。
スリッパを引きずるように歩く音―――
私の頭より心臓の方が早くその足音が誰の足音なのか分かったらしく、ドキンと大きく動き出した。
身体中が心臓になったかのようにドキンドキンとうるさい。
うるさい胸に手を当てて、
足音の方を振り向くと……
高木先輩がいた。
どのくらいその姿を見ていなかっただろうか。
高木先輩はポケットに片手を入れて、いつものようにめんどくさそうにスリッパを引きずりながら、まっすぐこっちに向かって歩いてきている。
久しぶりに会えたその感動で、鼻の奥がツンとなる。
「先輩……」
考えるよりも先に言葉が出ていた。