コクリバ 【完】
私の声が聞こえたのか、高木先輩はピクリとして足を止め顔を上げた。

その瞬間、まだ先輩との距離はかなりあったけどハッキリと見えてしまった、高木先輩が眉をしかめたのが。
次に分かったのは、先輩の冷たい目。
馬鹿にしたような、汚いものでも見たような、そんな冷たくて怖い目で、見られている。 

最悪の予想が当たった……

まるで時が止まったようだった。

足元からカタカタと震えが走り、全身が凍ってしまったのかのように動けない。
「違う」と叫びたいのに、喉がくっついたみたいで呼吸もできない。
目が熱くなって、ユラユラと高木先輩が見えなくなっていく。

たぶん、一瞬だったと思う。

高木先輩が睨むような視線を逸らし後ろ姿になると、元来た廊下を戻って行く。

その背中が、全身で私を拒否している。

嫌われた―――

そう悟った時、パシン っと、何かが壊れる音がした。
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