コクリバ 【完】
『あの女はやっぱり市原と付き合ってた』

スキャンダラスな噂は言ってみれば普通の噂へと変わり、私が廊下や教室で卑猥な目で見られることは少なくなった。
曖昧な身体の関係だけというより、彼女っていう位置づけは上らしい。
離れていってたクラスの子も、また話しかけてくれるようになっていた。

「市原先輩と付き合ってるなんてすごいね」
「私も市原先輩と話してみたい」

そんなお願いまでされるようになってた。
そのたびにズキンと痛む胸を抑えて、笑っていた。
笑うしかなかった。

誰に何を言われても良かったんだ。
ただ一人の人から信じてもらえれたら、それで良かった。

なのに……

高木先輩からの電話はまだかかってこない。
< 204 / 571 >

この作品をシェア

pagetop