コクリバ 【完】
「ちょっと待ってろ。雅人、呼んできてやる」
山さんが軽自動車を中に止めて奥の方へ歩いて行った。

高木先輩が辞めた?
知らなかった。
忙しいんだとばかり思っていた。

頭が真っ白になる。
動けないで立ち尽くしていたら、菊池雅人が歩いてきた。

「何しに来た」
第一声から喧嘩腰。

菊池雅人が、あの日の高木先輩と同じ目で私を見下している。

菊池雅人にも信じてもらえなかったんだ。

「セイヤは辞めたよ。何で今頃来てんだよ。誰のせいでこうなったと思ってんだ!」

話す毎に荒くなるその口調は、本当はもっと怒鳴りたいのを我慢しているみたいで。

「な、なんで辞めたの?」

聞きたくないけど、聞かなきゃいけないような気がする。
答えなんて薄々分かってたけど
認めたくなくて、違うと言ってほしくて、そう聞いたのに…

「おまえのせいだろうが!」

一番聞きたくなかった答え。

胸が苦しい。

なんでバイトまで辞めたの?
私に会うのがそんなにイヤだったってこと?
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