コクリバ 【完】
「えっ?」

いわゆるお姫様抱っこだと気付いたのは玄関に入ってから。
高木先輩の顔が目の前にある。

「あ、あの……」
「黙ってろ」

それでも冷たいその声に目を逸らし、そうするしかないと諦めた。

お姫様抱っこされたまま、自分の家のリビングのソファーに連れて行かれた。

確かにこっちの方が早いだろう。
でもお姫様抱っこなんてされたことないから、すごく居た堪れない気持ちになる。

ソファーに下ろされた時は、まだ靴も履いたまま。
先輩が足元に座り込み、そっと靴に手をかけようとしている。

「じ、自分でやります……」

だけど先輩は一瞬私を睨んで、その言葉を無視して両方の靴を取った。
左足首を触り、更に紺ソックスにまで手をかけゆっくりと脱がせている。

こんな時だけど、ドキドキが止まらない。

先輩の大きくて節ばった手が優しくソックスを剥ぎ取るから、恥ずかしくて足に力が入ってしまう。
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