コクリバ 【完】
「腫れてるな」
左足首は赤くなって膨らんでいた。

「救急箱は?あんだろ?緒方さんのが……」

何がしたいのか分からずに固まっていると、先輩が顔を上げて睨んでくる。

「たぶん捻挫だろ?」

先輩の手は私の左足に触れたまま。
先輩はそんなこと気にならないのだろうか。

「取り敢えず冷やせ」

先輩に触れられてる左足が熱い

「それでも痛むなら、後から兄貴にでも病院連れてってもらえばいい」

なんで、そんなに、優しいの……

「応急処置くらいしてやるから、どこにあるか教えろ」

涙が滲んできたから、慌てて階段下の扉を指さす。

「兄の道具は全部あそこに……」

先輩はすっと立ち上がり、階段下の扉を開けて中を漁ると、救急箱を持って戻ってきた。

「少し痛むぞ」

そう言うと私の足元に胡坐をかいて、私の左足をその足に乗せると手際よくスプレーやテーピングをしていく。

大きな手が私の足を持ち上げるたびに痛みが走るのを、口に手を入れて我慢した。

先輩に触れられている―――

痛みなのか、何なのか分からない感情が、涙を溢れさせる。
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