コクリバ 【完】
高木先輩にしてもらったテーピングはとても綺麗で、放射状の模様に感心した。

少し痛みも和らいだような気がする。

「ありがとうございました」

助けてもらったのが高木先輩で良かった。

自分の置かれている状況も忘れてそんなことを思いながら先輩を見ると、高木先輩が濡らしたタオルを手に私を見下ろしていた…あの冷たい目で……

背中が凍り付いた。

「なにがあった?」

その目と同じ冷たい声。

市原先輩のファン集団にされたことよりも、市原先輩との関係をまた誤解されることの方が怖い。

なんて言えば分かってもらえるんだろう。
何を言えば“違う”ということが伝わるんだろう。

「顔、拭けよ」

濡らしたタオルを渡され、言われるまま顔を拭くと左頬に感じた違和感。

拭いたタオルを見ると、泥がついていた。
それまでどんな顔だったんだろう。

そんな顔を高木先輩の前に晒していたなんて恥ずかしくて顔が上げられない。
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