コクリバ 【完】
「あいつは教室で話してた。おまえのこと……」

誰のことを?
何て言ったって?

何か重大なことを言われた気がするけど、頭が真っ白で何も考えられない。

「そ、それは……」
「俺に何が言いたい」
「いち、はら先輩が、話すって」
「……」
「高木先輩にちゃんと言うって……」
「……何を」
「あの絵は……」
「絵なんか関係ねぇだろ!」

大きな手が私の手からすり抜けていった。

「先輩……」

だけどこの手を離しちゃいけないってことだけは分かるから、
カッコ悪くてもすがるような態勢で腕を伸ばしたのに、
肩をドンと押されて、ソファーにもたれる格好になった。

「これ以上何を聞けって言うんだ」

先輩の声が怒りに震えていた。

「……」
「おまえらの話なんて聞きたくねぇんだよ!」

先輩の目が私を睨みつけ、先輩の両手が私の胸ぐらを掴んでいた。
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