コクリバ 【完】
あぁ。
私はいつのまに“他の奴の女”になったんだろう

辛くて、情けなくて、もう何も言えない。

伸ばした手が力なくポタリと膝の上に落ちた。

分かっていたつもりだったのに……
ずっと先輩に拒否されていたこと知ってたのに……

それでも、ちゃんと話せば分かってもらえるなんて……そんなことあり得ないのに……

秒針の音がやけに大きく聞こえる。


「……ふん……」

先輩が鼻で笑った。

「残念だったな……」

先輩が一歩距離を詰めた。

「どんな噂を広めても……」

先輩が私のすぐ横にしゃがんだ。

「おまえの初めては……」

先輩の顔がすごく近いところにある。

「あいつじゃねぇ……」

先輩の大きな両手が、私の耳のすぐ横のソファーにつかれた。

「俺だよ……」

先輩の左頬が上がった瞬間、

噛みつくように唇を塞がれた。
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