コクリバ 【完】
どれだけそうしていたんだろう。
泣き疲れて、ソファーにもたれ、どこともないところを見ていた時、不意に玄関から音が聞こえてきた。
先輩が戻って来たのかと、有りもしないことを一瞬考えていると、鍵を差す音が聞こえた。
母か兄だろう。
こんな姿見せられないと、急いで部屋に戻ろうともがいていたら、ドシドシと近づいてくる足音。
リビングに顔を出したのは、兄だった。
「カバン、玄関に置きっぱ……って、奈々!」
兄が私のカバンを投げ捨て、一瞬でソファーの横に座った。
「おまっ、それっ、なんっ……」
言いたいことは分かる、こんな格好私も見られたくなかった。
「転んだ」
「はぁ?嘘つくな。…誰だ。誰にやられた?」
兄の右手が、私に触れそうで触れないところを右往左往している。
「自分で、転んだ」
「バカ!転んだだけでこんなになるかって」
「転んだの!」
「誰だか聞いてんだろ!」
「ほ、ほんとに、ころ……」
泣き尽くした…と思っていたのに、心配そうな兄の声で安心したのか、また涙がでてくる。
泣き疲れて、ソファーにもたれ、どこともないところを見ていた時、不意に玄関から音が聞こえてきた。
先輩が戻って来たのかと、有りもしないことを一瞬考えていると、鍵を差す音が聞こえた。
母か兄だろう。
こんな姿見せられないと、急いで部屋に戻ろうともがいていたら、ドシドシと近づいてくる足音。
リビングに顔を出したのは、兄だった。
「カバン、玄関に置きっぱ……って、奈々!」
兄が私のカバンを投げ捨て、一瞬でソファーの横に座った。
「おまっ、それっ、なんっ……」
言いたいことは分かる、こんな格好私も見られたくなかった。
「転んだ」
「はぁ?嘘つくな。…誰だ。誰にやられた?」
兄の右手が、私に触れそうで触れないところを右往左往している。
「自分で、転んだ」
「バカ!転んだだけでこんなになるかって」
「転んだの!」
「誰だか聞いてんだろ!」
「ほ、ほんとに、ころ……」
泣き尽くした…と思っていたのに、心配そうな兄の声で安心したのか、また涙がでてくる。