コクリバ 【完】
「こんにちは」
「おじゃましてます」

二人が同時に兄に言うと、兄は軽く会釈だけして「はい」と私に箱を差し出した。

「なに?」
「3人でどうぞ」

言いながら兄はドアを閉め、また階段を下りてく。

「そこ、知ってる。シュークリームが有名なケーキ屋さんだよ」
絢香が嬉しそうな声を出した。

「うん。そうそう」
ともちゃんも笑顔。

「え?そんなに有名なの?」
「奈々、知らないの?」
「うん。でもお兄ちゃんも知らないと思う。たぶん中身はシュークリームじゃないよ」

そう言いながら箱を開けると、

「やった!シュークリーム!」

……なんだろう。この違和感。

昨日、兄は何も聞いてこなかった。
だけど何かと私の様子を探りに来る。

これまでだって私の友達が来てるからって、お菓子を、ましてや有名店のスイーツをくれたことなんて一度もない。
これまでにないその行動に、何かがあるような気がしてならなかった。
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