コクリバ 【完】
馬鹿にしたような声の響きに寒気すら覚えた。

「市原か?高木か?」

先輩たちを呼び捨てにする…そんな吉岡を私は知らない。

「3年だったら誰でもいいのか?」

吉岡が身体ごと近づいて来て、もう爪先立ちになっても吉岡の腕の中から逃げられない。

「ふっ…」

不意に笑うような声がして見上げると、目は笑ってないのに口元が上がってる吉岡の顔がすぐ近くにあった。

「誰とでも寝る女だったんだな?」

「どいて!」

吉岡の胸を叩き強行突破に踏み切った。

だけどすぐに腕を取られて、両腕で抱きしめられるような格好になる。

さらにロッカーに押すように戻されるから、背中に痛みが走る。


違う―――
こんなの吉岡じゃない―――

鼻の奥が痛んで、涙がにじむ。

「あんなカッコまでして…何してんだよ、緒方!」

吉岡の叫ぶような声にびくりとすると、唇に暖かい感触がした。

それがキスだと分かるのに時間がかかった。

高木先輩じゃない人の唇が触れている―――
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