コクリバ 【完】
なにもこんな場所で泣かなくてもいいのに
そう思うけど、涙が止まらない。

こんなに大勢の前で、失恋したとバレてしまう
そう思うけど……

「うっ、うっ、うっ……」

涙の止め方が分からない。


恥ずかしいのに、顔を隠す方法も忘れた。

早く誰もいないところに行きたいのに、どうやって立ち上がるのかさえ分からない。


「高木……もう二度とうちに近寄るな」

兄の声も遠くの方で聞こえる。



なんで今まで気付かなかったんだろう。

もう終わっていたことだったんだ。

何を一人で勘違いしていたんだろう。

先輩の中では、とっくに終わっていたんだ。

なのに、なのに……

まだ目が先輩を探してしまう。



「義人。悪い、先に帰る。車、貸してくれ」
「あぁ。早く帰ってやれ」
「中山。あとは頼む」
「…あぁ」

兄たちの会話を聞きながら、高木先輩を見ていた。
ぼやけた視界だし、先輩は下を向いているからその表情が分からない。

兄は私を隠すようにして、教室から出た。

もう一度だけ、その声が聞きたいと思ったけど、


何も言えなかった。

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