コクリバ 【完】
時はすぎ2月に入り寒い日が続いていた。

その日は朝から雨が降っていて、今にも雪に変わるんじゃないかってくらい底冷えのする日。

「なんか今日は賑やかだね」

そんな寒い日にも関わらず、教室の出入りも、窓から見える校庭や渡り廊下を歩く人もいつもより多くて

「3年生の登校日だったらしいよ」

誰とはなしに言った私の言葉に、近くにいたクラスメイトが答えた。

「そっか……」

それだけ呟くと、下を向いて帰る用意を続ける。

3年生たちの卒業が近い。
同時に自分たちも一学年上がる。

そんないつもとどこか違う落ち着かなさが学校中に充満している。

「奈々。帰る?」
「うん」

いつものように絢香と帰ろうとしたとき、

「今日寄りたいとこあるんだけど、ついてきてくれない?」

絢香が嬉しそうに口にした。

すぐにバレンタインデーにオサムッチに渡すプレゼントを買いに行くんだと分かった。

から、笑顔を張り付けた。

「ごめん、今日はゆっくりできないの。ピアノを習い始めたから……」
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