コクリバ 【完】
美術室に入ってしばらくしてから気が付いた。

今日も部活はなく誰もいないはずなのに、美術準備室から物音がする。

誰か来てるのだろうか

クラスメイトの言葉が甦る、
「3年生の登校日だったらしいよ―――」

イヤな予感がした。

美術室を出ようとドアの方に向きかけたとき、
開け放たれた準備室のドアに人影が見えた。

―――市原先輩だった。

「…あ……」
「……」
「……元気だった?」
「……はい……」

市原先輩の顔には王子様的な綺麗な微笑みが浮かんでいる。
私の嫌いな笑い方が……

「荷物の整理に来たんだけどね。そうだ奈々ちゃん、これあげるよ」
先輩が差し出してきたのは、36色セットの色鉛筆。

「同じのを買ってしまったから、良かったらもらって」

「……ありがとうございます」
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