コクリバ 【完】
「奈々ちゃん、髪切ったんだ。雰囲気が全然違うね」
「……」
「いろいろ迷惑かけて……ごめん」
「……」
「俺がモデルなんて頼まなけ……」

「先輩は……」

今更どんな言葉も聞きたくない。

「うん」
「美大、受かったんですか?」
「あ、あぁ。志望校に入れた。それも全部奈々ちゃんのおかげだと思ってるよ。ありがとう」
「あの絵があったからですか?」
「あぁ。あの絵が認められたのは大きかったと思う」
「じゃ、良かったです……おめでとうございます」
「ありがとう……」
「……」
「……」
「……」
「……あれから、高木とは……」
「高木先輩も、嬉しいと思います」
「え?」
「前に、市原先輩が美大目指してるって話したら、あいつらしいなって……だから、市原先輩が美大決まって嬉しいと思います」
「……」
「高木先輩も大学行きたかったそうです。バスケが、したかったって……そう、言ってました」

何を言いたいのか分からなかった。
分からないまま喋り続けてた。
でも、確信がある

―――市原先輩が嘘をついていたという確信が、私にはある―――
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