コクリバ 【完】
そんなことをやっていたせいか、その日夢を見た。

今日は発表会だというのに、ヒマワリ組は何も準備ができてない。
もうすぐ出番だと呼びに来られたときも、子供たちは自由に遊んでいて、練習ができない。

並ばせようと名前を呼ぼうとしても、その子の名前が出てこない……

ガバっと飛び起きると、自宅アパートのベッドの上だった。
ドクドクとイヤな鼓動が胸の中でうるさかった。


「おはようございまーす」

友紀奈先生の明るい挨拶でいちご狩りへのバス遠足が始まった。
春休みは夏休みほど利用の子供たちは少ないけど、それでも緊張しているのは、昨夜の夢のせい。

「奈々先生、どうしました?」

にっこり笑顔の洋祐先生が、子供たちに囲まれながら聞いてきた。

「すみません。何かおかしかったですか?」
「今日はいつもの元気がありませんね」
「……プレッシャーに弱いみたいで、初めてクラスを受け持つので、緊張しているんです」

足元にいる子たちの帽子を直しながら小声で答えた。

「みんなそうですよ」
「え?」
「私も何度担任をしても、最初の日は緊張で吐きそうでした」
「洋祐先生が?」

顔を上げ洋祐先生の方を見ると、照れたようにニヤリと笑いうなづいている。
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