コクリバ 【完】
5月の半ばごろになると、お歌の練習や、絵本の読み聞かせも、ちゃんとできるようになって、ようやくヒマワリ組も落ち着いてきた。
そうなってくると仕事が楽しくなる。
そんな仕事に燃えて明日の準備をしていたところに、真理子先生が入って来た。

「自衛隊さんは海上だって」

突然話始めた真理子先生のその言葉に、心臓がドキンと跳ねあがる。

「何がですか?」

なんで真理子先生があの人のことを知ってるんだろうと、そればかり気になっていたら、

「今度の合コンの相手」
そう教えられた。

「あぁ。そうでしたね……」
なぜかドキドキが止まらない。

カイジ、海自、
いつだったか誰かがそんなことを話してた気がする。

「来週の土曜日だよ」
「分かりました」

さりげない感じで答えたけど、真理子先生の方が見られなかった。

「奈々先生……」

真理子先生がニヤニヤしているのが、その声で分かる。

「なんですか?」
「自衛隊好きなの?」
「え?」
「あのムキムキした感じがいいとか?」
「えー?」
「だって奈々先生、ほっぺが赤いよ」

ケタケタと笑いながら教室を出て行く真理子先生。

そんなに分かるものなのかと、恥ずかしくなる。

もう治ったと思っていたのに
もう滅多なことでは赤面症にならなかったのに

たぶん、真理子先生がからかうから、頬が熱くなったんだ。

だって、もうあの人のことなんて気にしてないから
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