コクリバ 【完】
翌週の土曜日までは長かった。

その日、合コン場所の近くで先に女子チームで集まる。
大人数だと言っていた真理子先生の言葉通り、女子チームだけでも10人以上はいる。
その中には、何回か合コンで一緒になったことがある真理子先生の戦友もいた。

「奈々ちゃん。今日は気合入ってるね」

会うなり真理子先生の戦友が話しかけてきた。

「そうだよ。奈々はマッチョ好きなの」

真理子先生が余計な説明をするから、その辺にいた戦友や敵友たちが笑って見ている。

「そうなの?じゃ、一番のマッチョは奈々ちゃんに譲るね」

真理子先生の戦友は、真理子先生に似てノリが良い。

すっかりマッチョ好きのイメージを持たれたまま、ぞろぞろと会場の居酒屋を目指した。


分かってる―――

自衛隊には何万人の人がいることくらい知っている。
その中で一人の人に会う可能性なんて何万分の一だということも、頭では分かっている。


なのに会場の居酒屋に着くと、私の胸はどうしようもなくドキドキ鳴りだしていた。

居酒屋の奥の広間へと案内される。
真理子先生を筆頭にぞろぞろと入って行く女子チームの最後尾についていく。
奥の広間からは拍手なんかも聞こえてきた。

でも、そこへ入った瞬間、私の目はただ一人の人を探した。

相手チームの全員の顔を、2度往復した。


私は静かにうつむいた。

―――別に期待なんてしていない。

何万分の一の確率なんて、ほとんど無いってことだし、
今日は大人の人と話するためだし……
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