コクリバ 【完】
「キャンプ体験?」
「そうそう。洋祐先生主催で、洋祐先生の大学時代のサークルの人たちがサポートに来るんだって」

キャーって叫びそうなくらい嬉しそうな真理子先生が、職員室に戻るなり興奮気味で教えてくれた。

「へー」
「その場所が良かったら来年から年長さんを連れて行こうかって、下見を兼ねてるんだって」
「ふーん」
「今年は先生だけで、希望者のみでね。先着8名まで連れて行くんだって」
「8名?中途半端ー」
「部屋のベッドの数だよ。それくらいピンとくるでしょ?」
「いや、来ないですよ」
「相手も8名らしいよ」
「相手?」
「洋祐先生のサークルの仲間だよ」
「デカい合コンですね」
「キャー!そうでしょ?奈々もそう思うでしょ?」

やっぱり「キャー」って言った真理子先生に笑いそうになった。

嬉々として叫んだ真理子先生が、周りに誰もいないのをもう一度確認してから、私にすり寄ってくる。

「なんですか?」
「デカい合コンみたいでしょ?」
「そうですね」
「でも合コンは行っちゃダメよ」
「はい」
「だからこれは合コンじゃないの。下見なの」
「でも、わざわざ人数まで合わせて……」
「それはベッドの数的な問題で、人数合わせとかではないの。しかもよ。ここが一番重要なところよ。洋祐先生主催なのよ。ということは洋祐先生公認ってことよ」

どうだ!と言わんばかりに胸を張る真理子先生に吹きだした。

「公認って言うより、お目付け役なんじゃないですか?」
「え?」
「洋祐先生と一緒で楽しいですか?9時消灯ですよ」
「……」
「もちろん男女間で話をするときには洋祐先生の許可が必要で」
「えー」
「アルコール類は持ち込み禁止ですよ」
「マジ?」
「合コンみたいなやつ、洋祐先生が許す訳ないじゃないですか」
「……」

真理子先生が固まっている。
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