コクリバ 【完】
そんな真理子先生を放って、日誌を書き始めていると、

「でも、それでもいい」

真理子先生が突然動き出した。

「……」
「それでも私は行く。下見だったとしてもね」

やけに下見を強調した真理子先生に同情したくなった。

「はいはい」
「でね、奈々先生」
「はい、なんですか?真理子先生」
「お願いなんですが……」
「分かってますよ。当番の日だったんですね?代わりましょうか?」
「ううん」
「ん?当番じゃないんですか?」
「先着8名なの」
「はい」
「今日、戻ってきたらもう参加希望の名簿があったの」
「はい……」
「……だから書いちゃった」
「……」
「……ごめん」
「え?何を書いたんですか?」
「既に友紀奈先生の名前が書いてあったの。でもね、めぐみ先生は行かないって言うし、新人ちゃんと行ってもねー。連携プレーがまだイマイチねー。だからね……」

「はぁ?」

可愛く「えヘヘ」と笑う真理子先生を睨むけど

「お盆明けの週末だからよろしくね」

立ち上がりかけた真理子先生の腕を掴む。

「言い逃げですか?」
「逃げてません」
「よろしくってなんですか?」
「言葉の通りです」
「真理子先生!」
「はい!」
「自分の名前書いたんですよね?」
「もちろん。私が行かなくてどおすんのよ」
「他の人の名前を勝手に書いてないですよね?」
「書いてないです!奈々先生以外のは……」
「真理子先生!」
「そんなに叫ばなくても聞こえてるって」

逆ギレ気味の真理子先生に詰め寄った。

「私の名前も書いたんですか?」
「……ダメだった?」
「ダメですよ。なんで勝手に……」
「ずっと悪いって思ってたの!」
「……」

真理子先生が突然シリアスモードで話始めたから、何も言えなくなる。
< 328 / 571 >

この作品をシェア

pagetop