コクリバ 【完】
「これは?」
「他の園では年長児に、お泊り保育というのをさせているそうです。親元を離れて集団で寝泊まりすることで、子供たちが大きく成長するそうです。今年は準備が間に合いませんでしたが、来年度はやろうと思います。そのための保護者へのアンケートです」

洋祐先生が外に飛び出した子供たちを優しい目で見ている。
本当に子供が好きなんだろうな、とその目をじっと見てしまった。

すっと洋祐先生の眼鏡越しの視線がこっちに戻ってきたから、慌てて視線を逸らせた。

「ヒマワリ組さんが最初の子たちになりますね。奈々先生、よろしくお願いしますね」
「……はい」

イヤだ。なんて言ってられなくなった。
来年、ヒマワリ組のみんなが年長さんになった時に、初めて行われるサマーキャンプ。
どうしよう。ドキドキしてきた。

来年も担任できるか分からないけど、みんなと一緒にサマーキャンプ行きたい。
みんなにいろんな経験をさせてあげたい。

「洋祐先生。こちらこそよろしくお願いします。では、失礼します」

まだヒマワリ組の教室にいた洋祐先生を置いて、私も外に出た。

めぐみ先生のクラスも、真理子先生のクラスも外に出ていて、園庭は一層賑やかな声が響いている。

「よーし。先生とかけっこする子は集合!白い線の周りを一周するよー」

子供たちの楽しげな笑い声が大きくなる。

「よーい、ドン!」

一斉に走り出した年中組のみんな。

来年は、この子たちをキャンプに連れて行きたい―――
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