コクリバ 【完】
「緒方……」
「ん?」
「……なんでもない」
「うん……」
「……それ……寝そう……」
「うん。寝ていいよ」
「……」
「……」
「……奈々」
「うん……」

ゆっくり吉岡が起き上がり、私の正面に回り込んだ。

真っ直ぐな瞳が私を映している。

吉岡の両腕が私の肩に回されると、至近距離にその顔が近付いてくる。

鼻先が触れそうなところで吉岡が止まった。

「奈々……」

吉岡が私の名前を呼ぶ声が熱い。

「うん……」

私はそっと目を閉じた。
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