コクリバ 【完】
「あいつね、しばらく前に落ち込んでた時期があって……自分は副園長なんて向いてない、って言いだしたんだ」
「洋祐先生が?」
「一人の先生に感情的になったんだと……」
「……」
あれは感情的と言うより、ものすごく冷たい言い方だった。
「その人が、ヒマワリみたいな人らしい」
「え?」
「まさかヒマワリ組とはね……」
谷さんが自嘲的に笑う。
「それ、本当に私じゃないと思います」
「なんで?」
「私はヒマワリって感じじゃないです。ヒマワリって感じがするのは、真理子先生とか、サキ先生みたいな華やかな人たちがそうだと思います。私はただヒマワリ組の担任なだけで……」
「そうかな……」
担任ってだけでその花に似つかわしいとは限らない。
「私はどちらかと言うと、朝顔っぽいかもしれません」
「朝顔?」
「同じ夏の花でも、朝だけひっそりと咲いてるような……」
「そして昼になると、昼寝して?」
「そうですね。昼間は暑すぎますから」
あはは…と二人で声を出して笑った。
「奈々さん。面白いね」
「谷さんも」
「俺、洋祐と張り合ってみようかな」
「だから私じゃないですって」
遠くを見ていた谷さんが、フッと息を吐いた。
「君だよ。間違いない」
「……」
谷さんの声が一段と低くなる。
「あいつは良い奴だよ。ただ一人で突っ走って空回りするけど……あいつで上書きしてみたら?」
谷さんが岩から立ち上がるのをじっと見ていた。
あの人ではない。
分かっているのに、低い声でそう言うから、あの人に言われたみたいな気がする。
もう、いい加減にしろ―――って言われたような……
立ち上がった谷さんが、遠くの方の誰かに片手を挙げて合図した。
反射的にそっちを見ると、洋祐先生がすぐ近くまで来ていた。
「洋祐先生が?」
「一人の先生に感情的になったんだと……」
「……」
あれは感情的と言うより、ものすごく冷たい言い方だった。
「その人が、ヒマワリみたいな人らしい」
「え?」
「まさかヒマワリ組とはね……」
谷さんが自嘲的に笑う。
「それ、本当に私じゃないと思います」
「なんで?」
「私はヒマワリって感じじゃないです。ヒマワリって感じがするのは、真理子先生とか、サキ先生みたいな華やかな人たちがそうだと思います。私はただヒマワリ組の担任なだけで……」
「そうかな……」
担任ってだけでその花に似つかわしいとは限らない。
「私はどちらかと言うと、朝顔っぽいかもしれません」
「朝顔?」
「同じ夏の花でも、朝だけひっそりと咲いてるような……」
「そして昼になると、昼寝して?」
「そうですね。昼間は暑すぎますから」
あはは…と二人で声を出して笑った。
「奈々さん。面白いね」
「谷さんも」
「俺、洋祐と張り合ってみようかな」
「だから私じゃないですって」
遠くを見ていた谷さんが、フッと息を吐いた。
「君だよ。間違いない」
「……」
谷さんの声が一段と低くなる。
「あいつは良い奴だよ。ただ一人で突っ走って空回りするけど……あいつで上書きしてみたら?」
谷さんが岩から立ち上がるのをじっと見ていた。
あの人ではない。
分かっているのに、低い声でそう言うから、あの人に言われたみたいな気がする。
もう、いい加減にしろ―――って言われたような……
立ち上がった谷さんが、遠くの方の誰かに片手を挙げて合図した。
反射的にそっちを見ると、洋祐先生がすぐ近くまで来ていた。