コクリバ 【完】
「洋祐先生、意外とやりますね」

その笑顔に安心してつられて笑顔になる。

「奈々先生は、谷がタイプなんですか?」
「え?」
「仲良さそうでしたから……」
「……知り合いに、似てるんです。だから谷さんは話しやすいんだと思います」
「……」

洋祐先生が黙って私を見ている。
なんだかその視線が辛い。

「……なんですか?」

どうしてケンカ腰で聞いてしまうんだろう。

「嫉妬しますね」
「はい?」

全然、嫉妬という言葉とは真逆の、落ち着いた口調。

「谷は一日であなたと仲良くなれたのに、私は4ヶ月もいるのに誰一人として仲良くなれません」

そう言った洋祐先生がひどく疲れているように見える。

「洋祐先生……」
「なんでもないです。さぁ、急いで戻りましょう。みんなが待ってますよ」

洋祐先生はあっという間に私の横に来ると、枝の入ったビニール袋を持とうとする。

「それは自分で持ちます」
「分かりました」

洋祐先生が私を気遣いながら前を歩く。
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