コクリバ 【完】
「洋祐先生もみんなと仲良いと思いますけど……」

枝の入ったビニール袋を持ち直しながら言うと、洋祐先生は首を横に振った。

「いいえ。距離を感じてます。私が男だからか、中に入っていけない雰囲気があります。女の人は怖い」
「え?洋祐先生が?すごい人気じゃないですか、今日だって洋祐先生の調理班は取り合いでしたよね?」
「そういう関係じゃなく、同僚として意見を交換したいんです」
「あー」
「でも、その辺で距離を感じるんです。奈々先生もそうでしょ?」
「……」

何も言えない。
洋祐先生は別の次元の人だと思っていたから。

「谷が羨ましい」

ふーっとため息をついた洋祐先生が痛々しく見える。

「先生。疲れてませんか?」
「そうかもしれません」
「頑張り過ぎですよ」
「そう見えますか?」
「その喋り方やめてみたらどうですか?」
「喋り方をですか?」
「じゃなかったら、園でスーツをやめてみたら……」
「スーツを?」
「今日の格好の方がいいと思いますよ。話しやすいです」
「気が付きませんでした……っと、気が付かなかった」

フッと二人で笑い合うと、空気が軽くなった気がした。
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