コクリバ 【完】
洋祐先生が何も言わないで私を見るから胸がドキドキとうるさくなる。

なんだろう

まさか洋祐先生相手に、恋だなんて……あり得ない。
洋祐先生は副園長だし、園のことしか考えてない冷たい人だし
いやいやいやいや、待って、きっとからかわれている

フッと隣から笑われてるような吐息が聞こえてきた。

ほらね、やっぱりからかわれてた。

「奈々先生は、昨日は沢の方には行ってないですよね?」
「……はい」
「行ってみましょうか。霧で良く見えないでしょうけど、綺麗ですよ」

そう言って歩き出した洋祐先生の左手が、しっかり私の右手を掴んでいる。

まるで恋人のように、手を繋いで歩いているみたいで……

右手が熱い―――

しばらく二人で何も話さないで手を繋いで歩いた。

恋愛経験がないわけじゃないのに、繋がってる右手に全神経がいく。


勘違いしないようにしよう。

霧で足場が悪いから、手を引かれているに違いない―――
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