コクリバ 【完】
陽が昇ってきて霧がなくなり始めると、手を繋いでいることが急に気になりだした。

だけど、洋祐先生は左手を離すつもりはないようで

「綺麗でしょ」

洋祐先生が教えてくれるまで、沢に着いていたことに気が付かなかった。

足元にちょろちょろと流れる小川は綺麗で、石がゴロゴロしている水底が透き通っている。
鳥の鳴き声や虫の声も聞こえていて、とても素敵な場所だった。

「子供たちをここに連れてきたいんですよ」

洋祐先生が優しく呟く声が自然に溶け込んでいく。

「水、触ってきていいですか?」

洋祐先生が繋いでいた手を離したから小川に近づき透明な水の流れに手を浸すと、冷たさが頭の芯まで冷やすようだった。

「うー。つめた」

洋祐先生も笑いながら隣にしゃがんで小川に手を入れる。

「あー。気持ちいい」

二人でしばらく手を浸して楽しんでいた、まるで子供みたいに


上書き、してみるのもいいかもしれない。



「奈々先生。手出して」

おもむろに洋祐先生に言われて、ドキドキしながら冷たくなった手を出すと、

「はい」

手の平にはカニが乗せられていた。

「ひー。無理です。いりません!」

あはは…と楽しそうに笑う洋祐先生。


やっぱり、違う人で上書き保存しようと考え直した。
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