コクリバ 【完】
「お兄ちゃん!なんでいるの?」

フェンスの向こうにいたのは兄。

「よぉ」
「よぉ、じゃないって。何してるの?」
「おまえが頑張ってるか監視に来た」

意味分かんない。

ニヤニヤ笑う兄の隣りには、綺麗な女の人が笑っている。
頭を下げると、その人も頭を下げてきた。

「彼女?」

小さな声で聞いてみると、兄は軽く頷いた。

「初めまして。妹の奈々です。兄がいつも、お世話に……って、あれ?堀さんですか?」

高校時代に見たことがある、私の一つ年上の先輩によく似ていた。

「私の事知ってるの?」
「堀先輩ですよね?高校の時、私、一つ下の学年にいました」

そう言うと堀さんの顔が赤くなるから、可愛らしいなと思った。
兄には勿体ないような気がする。

「って言うか、デートで妹の運動会とかありえなくない?」

私がそう叫んだ時、兄の視線が私の後ろに向いた。
それは見慣れた威嚇するような目で……

振り返ると後ろには洋祐先生が立っていた。
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