コクリバ 【完】
「いらっしゃい」
マスターの落ち着いた声が聞える。
発表会の打ち上げを一人抜け出し、カフェ・ド・マティスに来ていた。
しばらくここの珈琲の香りを嗅いでいない。
「ウインナコーヒーで」
「今日はブレンドじゃないんだ」
「うん。今日は甘いのが飲みたくて……」
カウンターではなく窓際のテーブル席に座った。
テーブルに肘をつき家路を急ぐ人たちを眺めていると、コトコトと小さく珈琲サイフォンが気泡を上げはじめる。
窓の外の人たちは、みんな偉いと思う。
どんな時でも真っ直ぐに頑張っていて、私だけいつまでもいつまでも過去を引きずっている。
過去の失恋も、過去の失敗も、全く乗り越えられない。
「お待たせ」
そう言って私の席にウインナコーヒーを置いたマスターはすぐにどこかへ立ち去っていった。
ブラウンシュガーの塊を2つカップに沈めた。
今日は苦い珈琲は飲みたくない。
マスターの落ち着いた声が聞える。
発表会の打ち上げを一人抜け出し、カフェ・ド・マティスに来ていた。
しばらくここの珈琲の香りを嗅いでいない。
「ウインナコーヒーで」
「今日はブレンドじゃないんだ」
「うん。今日は甘いのが飲みたくて……」
カウンターではなく窓際のテーブル席に座った。
テーブルに肘をつき家路を急ぐ人たちを眺めていると、コトコトと小さく珈琲サイフォンが気泡を上げはじめる。
窓の外の人たちは、みんな偉いと思う。
どんな時でも真っ直ぐに頑張っていて、私だけいつまでもいつまでも過去を引きずっている。
過去の失恋も、過去の失敗も、全く乗り越えられない。
「お待たせ」
そう言って私の席にウインナコーヒーを置いたマスターはすぐにどこかへ立ち去っていった。
ブラウンシュガーの塊を2つカップに沈めた。
今日は苦い珈琲は飲みたくない。